「採用できない」から「育成も追いつかない」へ

国内企業450社、転職者800人のデータをもとに、2026年上半期の国内DX人材市場を分析しました。表面的な数字だけ追うと、AIエンジニアの年収中央値が1,180万円(前年比+14%)と派手な見出しが踊ります。しかし、現場の課題はもっと深いところにあります。

3つの構造変化

  1. 「技術 × 業界」の二刀流が希少化 純粋なAIエンジニアの供給は徐々に増えています。一方、特定業界(金融、製造、医療)のドメイン知識を持ったAIエンジニアは、転職市場でほぼ流通していません。供給増の裏で、企業が本当に欲しい人材は逆に手に入りにくくなっています。
  2. 内製化シフトが、いよいよ本格化 5年前は「とりあえずSIerに発注」が標準でした。今は調査対象の62%が「主要なAIプロダクトは社内で内製」と回答。外部委託は補完的役割に。これに伴い、社内エンジニア向けの教育投資が急増しています。
  3. 「シニア層のリスキル枠」が新しい人材源に 40代後半-50代の社員に対し、AI領域へのキャリア転換を支援する制度を持つ企業が、過去2年で3倍に増加。経験豊富で業務文脈を理解している層が、新しいDX人材の供給源として再評価されています。

給与だけでは、もう採れない

転職者800人へのインタビューでは、「給与だけを理由に転職した人」は28%にとどまりました。年収中央値1,180万円という数字が独り歩きしがちですが、現場の人材は給与より、別の3つを重視しています。

  • 裁量の大きさ 技術選定や設計判断を、自分の意思で動かせるか。
  • 学習機会 業務時間で最新技術を試せる環境があるか。社外発信・学会参加が支援されるか。
  • 会社の本気度 経営層がAIに対してどこまで真剣に動いているか。「会社がAIに本気か」を、面接で必ず確認するという声が増えています。

採用を止めた企業の選択

注目すべきは、調査対象の14%が「採用を一時停止し、教育投資にシフト」と回答したことです。「市場から無理に採るより、社内で育てる方が早い」という判断。これは、市場価格高騰への合理的な対応でもあります。

採用市場で勝てるのは、給与で勝負する会社ではない。技術判断を任せ、経営が本気でAIに賭けていることを、行動で示せる会社である。
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