来年度予算編成、最初の論点

2027年度の予算編成シーズンに入った企業から、似た相談が同時多発しています。「AI関連の支出を、IT予算の中に押し込めるべきか、外に切り出すべきか」。これまで影が薄かった論点が、いま経営会議の議題として明示的に語られ始めました。

主要企業300社の予算実態調査では、すでに16%がAI予算をIT予算から切り離し、別の意思決定ラインに移しています。さらに31%が「次年度から検討中」と回答。3年以内に、AI予算独立が標準になる気配があります。

なぜ「IT予算の中」では収まらなくなったか

3つの構造的な理由が見えてきました。

  1. 意思決定スピードのミスマッチ IT予算は年次の硬い枠組みで動きます。一方、生成AIの世界は四半期ごとに新しいモデル・新しいツールが登場する。年次予算サイクルでは、機会の窓を逃します。
  2. 責任の所在のズレ AI活用の成果(売上、業務効率)は事業部の指標です。にもかかわらず、予算はIT部門が握る——この構造で、現場の納得感は得られにくい。「使うのは私たちなのに、決めるのは別の部署」という不満が、定着の障害になっています。
  3. 会計区分の不適合 AIの支出は、ハードウェア、ソフトウェア、データ、人件費、外部委託が複雑に絡みます。従来のIT予算項目では切り分けが難しく、効果測定もできない。会計上の見える化を求める動機が、構造変更を後押ししています。

独立予算化で、何が変わるのか

AI予算を独立させた企業に共通するのは、「責任者の明確化」です。多くの場合、CDO(Chief Data Officer)またはCAIO(Chief AI Officer)が新設され、事業部とCFOが直接やりとりする構造に変わります。CIOを経由しません。

この変化は、AIを「IT施策」から「事業施策」に格上げするということです。短期的にはCIOの権限縮小に見えますが、長期的には組織全体がAIに対する責任を取れる構造に進化していきます。

CFOの新しい仕事

注目すべきは、CFOの役割が変わっていることです。AI予算独立企業では、CFOが「AI ROIの定義」と「打ち切り判断」を担う事例が増えています。「これだけ投資して、何が返ってきたか」を測る最終責任者が、テクノロジー部門ではなく財務部門に置かれている。

これは、AIを経営の中心議題に引き上げる方向の動きです。財務の言葉でAIが語られ始めた時、企業のAI戦略は次のフェーズに入ります。

AIは、もう情報システムの一部ではない。経営の中心議題として、別の予算と責任の構造を求めている。
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